
1. 製作にあたって1999/6/8
2. ぺルチェコントローラの仕様1999/6/11
3. 製作開始1999/6/12
4. テスト&運用1999/6/12
5. 今後の課題1999/6/12
現在、効率的に物を冷やすには熱交換という手法を取ることになります。 熱交換とは字の通り2点間で熱を移動させることで、 一方が冷えてもう一方が温まるという効果が生じます。 熱交換にはかならずロスがありますから、冷却する熱よりも温める熱の方が多く放出されます。 つまり、トータルでは発熱しているわけで、現代の冷却システムは地球にやさしくない 装置と言えるでしょう。
CPUの冷却で良く使われる装置として、 ペルチェ素子 を使った冷却システムがあります。発熱や結露の問題はあるとはいえ、 現在ではもっとも簡単で効率的なCPUの冷却装置だと思います。 そこで当サイトでもペルチェ素子を使ったCPUの冷却システムの製作を試みることにしました。 まず、ペルチェ素子を使用した冷却システムの問題点を以下にあげてみます。
1.の廃熱の問題は、ファンを増設して空気の流れを良くするか、 水冷等の2次冷却システムを使う事が考えられます。 シングルCPUで、室温マイナス5℃程度の冷却ならば空冷でも可能です。 今回はCPUの温度を20℃程度に保つを目標としているので、 空冷システムにしました。 ただし、ケースを閉めた状態 で連続運転が可能なようにファンを増設して廃熱の処理をしています。
2.の結露の問題は、いちばん厄介な問題と言えるでしょう。 もし結露が発生してしまったら、水滴によってパターンがショートし、 最悪の場合システムを破壊してしまいます。どんなに運が良い人でも、 CPUからポタポタ水滴がたれている状態でコンピューターを動作させ続けることは難しいでしょう。
結露を発生させない方法としては、2つの方法があります。
一つは、結露点以下に冷えた部分を水蒸気を含んだ空気から遮断すること、
もう一つは結露点以下の温度に冷却しない事です。
前者の方法は、通常は空気中には多くの水蒸気が含まれていますから、
強力な除湿機でもつけないかぎり断熱材で冷却部を密閉することになります。
密閉してしまえば、CPUを氷点下まで冷却することも可能になるので、
大幅なオーバークロックが狙えます。ただし、空冷では氷点下冷却は実用上まず無理なので、
水冷等の二次冷却システムが必要となり、装置も大がかりになります。
後者の結露点以下に冷却しないという方法は、ペルチェに流れる電流を制御して、
温度をコントロールすることにより実現できます。室温以下に冷却しなければ、
湿度100%の状態でも結露が発生することはありません。極端に湿度が高くない限り、
室温マイナス5℃程度ならば結露は発生しないようです。
今回は、後者の必要以上に温度を下げない方法で結露を回避することにしました。 そこで冷却温度を制御するためのペルチェコントローラを製作する事になりました。
3.のペルチェのトラブルによる被害が、私がいちばん恐れている事です。
通常は、ヒートシンクとファンがついているので、
万が一ファンが壊れたとしてもヒートシンクからある程度の放熱は期待できます。
ところが、ペルチェでCPUを冷却している場合、もしペルチェに電流が流れなくなってしまったら、
ペルチェはただの断熱材へと変わり、CPUの温度は際限無く!?上昇してしまいます。
とくに電圧を上げてオーバークロックしている状態で、
ヒートシンクの放熱もなくCPUが加熱し続けたら、CPUを破壊してしまう恐れがあります。
ファンのみの冷却で2.4Vで560MHz動作する虎の子の
SL2TVが壊れてしまったら泣くに泣けません。
それにマシンは24時間つけっぱなしが前提です。常に人が監視しているわけではないので、
異常に気がついて電源を落すという事は期待できないのです。
そこで、なんらかのトラブルが発生した場合、
自動的にシステムをシャットダウンする装置が必要となります。
トラブルは何処で発生するか予測できませんから、
すくなくとも同時に二箇所でトラブルが発生しない限り安全にシャットダウンするシステムを考えました。
わかりやすく言うと、
ニッパーで好きな所を一箇所だけ切断してもCPUのメルトダウンは起こらないという事です。
4.の電源容量の問題ですが、85Wのペルチェ一枚を12Vで駆動した場合、約6Aの電流が流れました。
私の300WのATX電源は12V12Aが定格なので、ぎりぎり使える電流だとおもいます。
もう一つ気になるのが、ペルチェのON/OFFに伴って電源電圧が大きく変化することです。
さすが謎の中国製のATX電源で、0.4Vも変動してくれます。
これではHDDに悪影響が出そうで恐ろしいです。
そのため、最初はリレーかMOS FETによるON/OFFの制御にしようと思っていたのですが、
パワートランジスタを使用して電圧をゆっくりと変化させる回路にしました。
最低電圧から最高電圧まで変化するのに、3〜5秒の時間をもたせています。
これで急激な電圧の変化は起こらないので、ちょっぴり安心できます。
今回はATX電源の12Vを流用しましたが、
いささか不安なので、次回は15V10A程度の電源を製作しようと考えています。
2. ペルチェコントローラの仕様(1999/6/11)
以上のことを踏まえて、下記のようなペルチェコントローラーの仕様を考えました。
液晶表示と温度センサー部は、石塚電子(株)製のDMB100というモジュールを使用しました。
DMB100は液晶の温度計に設定したHiとLowの2つの温度のアラーム信号を出力する機能があります。
秋葉原の千石電商やヒロセテクニカル等のパーツ屋で入手可能です。価格は2200円でした。
パワートランジスタは、千石で適当に選んで買いました。たしか、90W程度のものだったと思います。
もう少しパワーに余裕が欲しいところですが、千石に置いてあったトランジスタ規格表が古すぎて、
3000番台以降の新しいトランジスタの規格が不明だったため、2SC2580を300円で購入しました。
ペルチェ2枚を駆動するためには、2つパラにます。
そのときは、エミッタに0.01Ω程度の抵抗を入れてください。
その他のトランジスタは、我が家に転がっていたパーツで済ませました。
パワートランジスタのドライブ用には2SC1212、その他はすべて2SC1815です。
ドライブ用は5W程度、その他は何でも大丈夫でしょう。
2SC372でも構いませんが、2SB56はPNPなので回路を変えないと使えません。(新品で在庫があったら貴重品かも)
以下にペルチェコントローラの回路図とパーツリストを示します。
6石といってもすべてダーリントン接続
ですから、パワーコントロール部とDMB100からのHi&Low信号の増幅の3回路です。
DMB100からの信号は1.5VとGNDの2ステートなのですが、
どれぐらいの電流が取れるかは不明だったため、
とりあえずダーリントン接続して10μA程度の電流で動作するようにしました。
FET入力でないのは、我が家に手頃なFETが転がっていなかったためです。
DMB100からのLow信号は温度制御用に、Hi信号は緊急シャットダウン用に使用しました。 つまり、Hi側はこれ以上温度が上がったらCPUが壊れるかも知れない温度を設定します。 不用意に低い温度を設定してしまうと、 ベンチマークソフトを起動した途端にシャットダウンしてしまい、 温度が下がるまで電源の再投入は却下されますので注意が必要です。
Hi信号は増幅してリレーを駆動します。Low信号には、コンデンサーを噛ましてあります。
これは電圧のON/OFFを緩やかに行うためで、
コンデンサーに徐々に充電/放電される事により、
ドライブ用トランジスタTr2のベースにかかる電圧を緩やかに変化させています。
リレーには、整流用ダイオードを通して1000μFのコンデンサーを接続してあります。
これは、電源が供給されなくなったときにリレーを駆動するための電源になります。
DMB100は、計測時間を1秒と10秒に切替えができます。 デフォルトは10秒で、このモードではアラーム出力を1分間ホールドしてくれます。 これがペルチェコントローラでは大きなお世話でして、 1秒モードにする必要があります。ところが、何故か1秒のモードだと温度設定が出来ません。 仕方が無いので、リレーを使って温度設定の時だけ10秒モードになるようにしました。
設定パネルにLEDを2個つけました。一つは常時点灯しており、 もう一つはペルチェの印加電圧が10Vを越えると点灯するようになっています。 単なるアクセサリーですから省略しても構いません。
パーツリストの価格はかなり適当ですが、秋葉ではこれより高いことはないと思います。
ヒートシンクはかなり熱くなりますので、
小さい場合は小型のファンを付けた方が良いかも知れません。
ただ、CPUと違って火傷しない程度の温度なら問題は無いです。

|
| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
DMB100の場合、30mm x 57.5mm の穴を開けるのですが、 私は電気ドリル連打で穴を沢山開けてニッパーで切り取り、 ヤスリでコツコツ削って形を整えました。 切れ味の良いノミがあったら作業が楽になるかも知れません。
あとはLEDとスイッチ、基板固定用の穴をドリルで開けてパネルの加工は終りです。
スイッチ類は、全体の厚さを薄くするために直接基板にハンダ付けできるタイプの物を使います。
押しボタンは、ボタンの面積が広いタイプの物を使い、
ボタン部よりもすこし小さな穴をパネルに開けます。
ボタン押すときは、ペンなどで穴の奥のボタンを押すようにします。
こうすると、見た目が美しく仕上ります。
DMB100は、温度センサー(40KΩのサーミスタ)を内蔵していますので、これを外に取り出さなければなりません。 蓋を開けて基板から温度センサーを取り外し、代わりにリード線を取り付けます。 そして、リード線の先にさきほど取り外した温度センサーを取り付けます。 このとき、端子の絶縁に気を付けてください。細めの熱収縮チューブを使って絶縁します。 温度センサーは、CPUのコアになるべく近い部分に張り付けてください。 リード線の途中にコネクタを付けておくと便利です。
パネルにDMB100をはめ込んで、ユニバーサル基板の当たりをつけます。 パネルからはみ出す部分はニッパーで切り取ります。10Pのコネクタが付きますから、 それのサイズも考慮にいれてください。 基板は、10mmのスペーサーを介して2箇所でパネルに固定しました。
次に、表示部の回路をICB-93上で配線します。 単純な配線ですが、ボタンやLED、スペーサーの位置に気を付けて部品を取り付けてください。 DMB100とも配線します。DMB100のS1端子に接続するアラームのON/OFFスイッチは省略しても良いです。 S2のセットボタンを押すと自動的にONになりますから、OFFにできなくなるだけです。
温度設定をするには、トグルスイッチをどちらかに倒します。すると、液晶表示部左に、 「Hi」か「Low」の表示があらわれ、それぞれの温度設定のモードになります。 S2のセットボタンを押すと、温度が1℃ずつ上昇していきます。2秒以上押し続けると、 連続して上昇します。トグルスイッチを元にもどせば設定完了です。 このとき、 12V電源が供給されていないとリレーが動作せず、設定モードにはなりませんので注意してください。
あたりまえの事ですが、12Vを通電したまま配線するような暴挙はやめた方がよいです。 DMB100は1.5Vで駆動する1チップICですから、 いずれかの端子に12Vが印加されたら一発で壊れます。 私はこれでDMB100を一つ御釈迦にしました。
つぎに表示部を接続して、 HiとLowの設定温度を調整してHiアラームとLowアラームの信号がでるようにテストしてみます。 Lowアラーム信号がHiになったら、Tr3のベース電圧が序々にあがり、 Tr2のベース電圧が下がって良く筈です。 Tr3のベース電圧が1.5VになったときがTr1の出力は最低になります。 この状態で半固定抵抗を回してみてください。 おそらく、6Vから10Vぐらいまで電圧を可変できると思います。 この電圧は、使用する環境でCPUがアイドル時でも結露が起こらない温度に調整します。 我が家は常時エアコンで温度と湿度が調節されているので15℃程度に設定しましたが、 高温多湿の室内で使う場合は室温か、室温マイナス5℃以内に調整したほうが良いと思います。
次に、温度設定を行いHiアラーム信号を出してみてください。リレーが動作すればOKです。
4.テスト&運用(1999/6/12)
ペルチェは560MHzのPentiumII(SL2TV)に使用しています。
KENDON製のピラミッドバッファとアルファ製のPM126C60のヒートシンクの間に、
85Wのペルチェを1枚入れてあります。
この状態で、ペルチェコントローラの出力電圧がハイパワーの時に、
Superπ演算時で室温マイナス8℃ぐらいまで冷却できました。出力電圧は10.5Vでした。
Lowパワー出力は、8Vに設定してあります。 これで、CPUアイドリング時に室温マイナス10℃ぐらいになります。 高温多湿の環境で使う場合は、6Vぐらいに設定したほうが良いと思います。
DMB100のLowアラーム設定を22℃に設定してありますので、 実際の温度は22℃の上下1℃ぐらいを行ったり来たりしています。
さて、緊急シャットダウン用のHiアラーム設定温度をテストのために30℃に設定し、 おもむろにペルチェに接続しているコードを切断してみました。(コネクタを外しただけです) すると、5秒ぐらいで温度は30℃を越え、 「カチッ」というリレーが動く僅かな音と共にマシンの電源が落ちました。
「パチパチパチ」と大成功の喜びに酔いしれる中、温度計の温度はさらに上昇を続けます。 電源切断後はファンも停止するため、CPUの温度はしばらくは鰻登りです。 そして、何気なく電源スイッチを入れてみると、またもや「カチッ」っと音がして、 電源が切れてしまいました。
むむむ…、CPUの温度は40℃。確かに正常な動作なのですが、 電源が入らないのには困ってしまいます。 設定温度を変えようとトグルスイッチを倒しても、電源OFF時には12V電源が供給されていない ので、温度設定ができません。 「これは設計ミスった」と思い一時は作り直そうかと思いましたが、 何の事はなく、トグルスイッチを倒したまま電源をいれたら、 アラーム出力が1分間は出力されないので事無きを得ました。
次に、パワーコントロール部に供給している電源コネクタを外してみます。 するとペルチェへの給電は停止しますので、温度はぐんぐん上がり、Hiアラーム設定温度に到達。 今度もきちんとリレーが動作してシャットダウンしました。 1000μFのコンデンサはリレーを動作させるには充分な電力を蓄えていたようです。
シャットダウンの回路は正常に動いている事が確認できたので、 いろいろとテストをしてみようと電源を落しました。 ビデオカードでも変えてみようかな..と思い、基板に手をかけた瞬間に、「カチッ!」 いきなり電源が入ってびっくり仰天! さきほどのテストで、Hiアラーム設定温度が30℃のままになっていることに気がつきました。
そう、電源断でCPUの温度がジワジワと上昇し、アラーム温度に到達。 すかざすリレー君はコンデンサーに蓄えられていた電力を使って電源スイッチを入れ、 ペルチェコントローラは見事に熱くなったCPUの冷却を始めたのでありました。
ここまでバカ正直に動作してくれると我ながら感心してしまいます。 くれぐれも、Hiアラーム設定温度は電源断の後にCPUの温度が上昇しても動作しない温度 に設定してください。あくまでもトラブル時の緊急対処用です。私は50℃に設定してあります。 念のため、カードの交換などの作業時には電源をコンセントから抜いておいた方が無難 でしょう。
これらの事に注意すれば、快調に動作しております。 思えばHiアラームの温度さえ高温にしておけば問題は生じないのです。
先日、運用中にいきなりシャットダウンしました。 まず脳裏をよぎったのは、「あ、ペルコンが壊れたな」という事でした。 CPUの温度計は50℃を指しています。CPUが自然に冷えるのを待って再び電源投入。 しかし、CPUの温度は鰻登りです。ペルチェの電圧を計測しましたが、 10.5Vで正常です。ううむ、ペルチェが壊れたかなぁ。。。 と思ってヒートシンクに手をかけたら、「アチッ!」 ヒートシンクが火傷するほど熱いではありませんか。良く見たらファンが回っていません。 なんと、マザーボードから供給されているファン用の12Vが出力されなくなっていました。 原因は不明ですが、ファンの電源を直接電源コネクタに接続して修理完了。 それ以後はトラブルもなく快調に動作しております。
5. 今後の課題(1999/6/12)
今後の課題として、やはり電源部が不安なのでペルチェ専用に電源を設計しようかと思っています。
パワートランジスタの発熱も気になりますから、
チョッパー制御のスイッチングレギュレータも試みたいところです。
これらについては現在企画中ですので、成果が上がり次第、記事にしますのでご期待ください。
最後にお約束の文句で恐縮ですが、 万が一、製作に失敗してマザーボードが火を吹いたりCPUが熔けてドロドロになってしまっても、 それはドジなあなたが悪いのであって、この記事を書いた私を怨まないように お願いいたします。
なお、今回製作したペルコンの販売も企画中です。もし需要があるようでしたら、 製作会社に依頼して製品化する可能性もありますので、 ぜひ御意見、御要望をわたしまでメールくださるか、 掲示板に書き込みをおねがい致します。